はじめに|なぜ今「干し柿」をつくるのか
里に獣が降りてくる原因の1つに、里山の季節の手仕事が減ってしまったことがあります。
田舎には放置された柿の木や、誰もとらない栗やクルミもたくさん落ちています。
土地開発のように、森を100から0にしてしまうような人の手の入り方があっても、昔のように人が森から薪やきのこなど季節の産物をいただき、ついでに森の手入れをするような関わり方は少なくなりました。
“自然と共に生きること”は、単に人が生きやすくなるだけでなく、森や動植物にとっても命が育まれる行いです。
その入り口として、私は干し柿という手仕事を大切にしています。

放置された柿の木と、足元にある豊かさ
田舎を歩くと、誰にも収穫されないままの柿の木をよく見かけます。
それは「もったいない」という言葉を超えた、足元にある豊かさの象徴ではないでしょうか。
自然を守るというと、山を買ったり林業のような大きなことを想像しがちですが、本来あるべき季節の実りをいただき、暮らしで生かすことも一人一人の単位でできる大切な関わり方です。
森と人との距離を近づけるのは、誰もができる一歩の積み重ねだと感じています。
柿は、縄文時代から人と生きてきた果実
秋が旬の《柿》は、縄文時代の遺跡からも種が出土しており、縄文人も食べていたのではないかと想像されています。
日本在来の柿は渋柿で、甘柿は自然変異や品種改良の中で後から生まれました。
縄文の人は、冬まで木にぶら下がったまま甘くなった柿を食べていたのかもと想像しています。
そこに人の知恵と工夫が加わり、「干し柿」という形になりました。
ただ実を食べるのではなく皮を剥き、干して待つ。
そのひと手間が、冬のごちそうを生み出します。
長い間人の暮らしの中で生きてきた柿が、人間の方からそっぽを向くことでその歴史を閉じてしまうことだけは避けたいものです。
海外のデーツより、干し柿がすごい理由
最近では日本の干し柿をさておき、甘味料としてデーツなどの輸入品の方がメジャーになっていることに違和感を覚えています。
干し柿の甘さは、自然の力だけで引き出された甘味料レベルの甘さです。
さらに日本に余っているものでできて、わざわざ遠くからコストをかけて選ばなくてもこれだけの甘さを引き出せるのですから手をかけない理由がありません。
「干し柿ってどうやって食べるんですか?」という質問をいただくこともあります。
逆転の発想ですが、デーツの代わりにスイーツの甘みに使ったり、和食のみりんの代わりやカレーの隠し味としても相性抜群です。
唯一ネックになるのは、買うと高いという点。自然と共に生きる暮らしとは、自然が近くなければ国内でも他県から仕入れるしかなくなります。
本質的な問題の解決の向けて、柿のある暮らしと季節の手仕事を取り入れたいと思う人が増える未来を願っています。

干し柿の基本的な作り方
干し柿づくりは、ただ皮をむいて干すだけのシンプルな工程です。
基本の材料は渋柿と、吊るすための紐の2つだけ。甘柿で作ることもできるようですが、虫がついたりカビが出やすく、また渋柿で仕込むほどの甘さにはならないため渋柿が最適です。甘柿が余るほどあり、活用したいという場合には「柿酢」への活用がオススメです。
《材料》
- 渋柿
- 縄や麻紐、PPロープ(ねじれているタイプがやりやすい)
《作り方》
- 渋柿の軸をT字にカットする
- 渋柿を軽く洗ってザルで水気を切る
- 渋柿の皮をヘタの近くまで剥く
- 皮をむいた渋柿の軸があるものは縄やねじれているタイプのPP紐に軸を挟めたり、麻紐で縛って10個程度をまとめて吊るせるようにする
- 軸がないものは、ゴム通しや箸で紐を刺したり、細い竹や園芸用の支柱にさして吊るすなどもある
※未乾燥の竹の場合は、内側のカビに注意 - 軒下など風通しの良い場所に干す
- 1週間に1回程度、表面が乾燥してきたら揉むとより美味しく柔らかな仕上がりになる
- 約1ヶ月ほどで完成
失敗を避けるコツ▶︎慌てず急がずグッと気温が下がってから仕込むことで、虫やカビ発生のリスクが抑えられます。紅葉も終わり木々が葉を落としきった頃が、干し柿には最適です。

捨てるとこなし柿仕事|皮やヘタなどの活用
渋柿は干し柿を作るだけで、終わりではありません。
- むいた皮で柿酢を仕込む
- 皮だけを干して、お料理につかう
- 食べたヘタをお茶にする
このように普通なら捨ててしまうものでも、一旦立ち止まって「なにか使えないかな」と考えてみることが、ひらめきのヒントになります。特に材料をいただいたり自分で育ててみると、より一つ一つの価値が高まるでこの感覚も自然と強くなりますよ。
より深く愉しむ、柿しごと

いつもなら麻紐で縛っていた干し柿ですが、今年は縄をなうところからやってみました。
本当に初めてだったので、できるかどうかもわからないし、きっと数本が限界だろうと予想していたのに、気づけば半分以上自分で編んだ縄にぶら下がる干し柿たち。
家の前を通るたびに、お金では手に入らない心が満ち足りるよろこび。
このように、季節の手しごとを通して幸せまででに入れることができるというのは言い過ぎではないと思っています。
“できないから、やってみる。”
知識を経験に変えると、それは財産になります。
柿しごとをはじめとする季節のある暮らしで、みなさんも日常にしあわせが宿る生活にシフトませんか。
暮らしが豊かになる、生きた学び「0円生活研究所」
季節の手しごとは「やりたい」と思ったときではなく、旬の時期にしかチャンスがありません。
また、材料ややり方がわからないことで二の足を踏む人が多いことも現実です。
季節を通り過ぎるのではなく、ひとつひとつを噛み締めるように手しごとを通して体感していく。
材料がお手元にない方、材料はあるけどやり方を知りたいだけでも大丈夫です。
自然と共に生きる経験を重ねたい方は、0円生活研究所のLINEにご登録ください。
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